近年、ECサイトを持つことは多くの事業者にとって当たり前になりました。しかし、システムの老朽化や競争の激化、顧客ニーズの変化など、さまざまな背景から「そろそろリニューアルを検討しなければならない」という場面が増えています。
「もっと売上を伸ばしたい」「最新の機能を取り入れたい」「ユーザーにとって使いやすいサイトにしたい」そんな思いを抱いている事業者様は多いのではないでしょうか。
本記事では、ECサイトのリニューアルを検討している方に向けて、リニューアルが必要な理由、具体的な手順、失敗しないための注意点、費用相場までを網羅的に解説します。
ECサイトリニューアルを検討する背景
まずは「なぜECサイトをリニューアルする必要があるのか?」という目的を明確にしましょう。目的を曖昧にしたまま進めると、コストだけがかかり成果が出ない事態になりかねません。
1. システムの老朽化
立ち上げ当初は最新の技術やトレンドを取り入れながら構築したECサイトも、5年、10年と長年運用を続けている間に、取り巻く状況はめまぐるしく変化していきます。
決済手段やデバイス環境の多様化に加え、セキュリティ要件は年々厳格化しており、かつては十分だったシステムも次第に時代に追いつけなくなります。
その結果、「ユーザーにとって使いにくい」「管理に手間がかかる」だけでなく、情報漏えいリスクや不正アクセスの脆弱性といった深刻な問題を抱えることになりかねません。
システムの老朽化を放置することは、売上の機会損失だけでなく、企業としての信頼性を揺るがすリスクにも直結します。
だからこそ、ECサイトを安全かつ成長可能な基盤に保つためには、定期的な見直しとリニューアルが不可欠となります。
2. デザインの刷新とUI/UXの改善
ECサイトのデザインは、ユーザーが迷わずに欲しい情報にたどり着けたり、スムーズに商品を購入できたりと、快適な購買体験を提供するためには最も重要とも言える要素です。
年月の流れとともに、「時代遅れ」のデザインに感じるようになったり、ユーザーの操作感に合わなくなったりすることがあります。
特に、スマートフォンからのWebサイト閲覧が圧倒的に多くなった現代で、モバイルに最適化されていないサイトはユーザーにとって操作しづらく、購入意欲を下げる原因になりかねません。
さらに、ユーザー自身も、日々利用するECサイトの操作やデザインに慣れていき、最新のトレンドに沿ったものを「使いやすい」と感じるように適応していきます。
古いデザインや操作性では自然と違和感を覚えてしまい、ストレスを感じることも少なくありません。
こうしたデザインやUI(ユーザーインターフェース)・UX(ユーザー体験)の問題は、ECサイトからの離脱やコンバージョン率の低下につながり、売上にも直結します。使いやすいUI・UXを導入することで、顧客の購買意欲を高めることができます。
3. 運用面の効率化や業務課題の解決
ECサイト運営においては、商品登録や在庫管理、受注処理、出荷の手配など、日々多くの作業が発生します。立ち上げ当初は手作業で対応できていたような業務も、取扱商品や顧客数が増えるにつれて運用負荷が大きくなり、ルーティーン業務の見直しや効率化を検討せざるを得なくなるケースも多いと思います。
また、既存のシステムによる仕様や機能制限によって、「特定の運用フローに対応できない」「機能性に不満がある」といったお悩みが表面化することも少なくありません。
こうした問題は、日常業務を圧迫するだけでなく、ヒューマンエラーのリスクも招き、顧客満足度や売上にも影響することがあります。
業務フローに沿った機能強化や自動化を進めることで、ユーザーにとっても利便性の高いサービスを提供できるようになるでしょう。
ECサイトリニューアルの手順:失敗しないための8ステップ
ECサイトのリニューアルは、デザインやシステムの変更だけでなく、事業全体に影響を与える大規模なプロジェクトです。ここでは、失敗しないために押さえておきたい具体的な手順を9つのステップで解説します。
Step 1. 現状の課題とリニューアルの目的を整理する
ECサイトのリニューアルによって解決したい課題や、そもそもの目的を整理して、刷新したい範囲や機能などを具体的に定めていきます。
「最低限これだけは解決したい(=でないとリニューアルを行う意味がない)」という内容や、「できれば追加したいが、導入費用やスケジュールに応じて検討したい」というような機能を整理して、各項目に優先順位をつけておくことが望ましいです。
「売上を伸ばしたい」「業務を効率化したい」といった目標を具体化し、達成するためのKPI(重要業績評価指標)を設定します。最低限解決したい必須要件と、予算やスケジュールに応じて検討する追加機能に優先順位をつけ、関係者間で共有することが重要です。
Step 2. 予算とスケジュールの希望、制作の方向性を決める
リニューアルを実施する上での予算感や、希望するスケジュール感をあらかじめ整理しておきます。
また、リニューアル時に発生する技術的な作業について、社内リソースで賄えるのか、必要に応じて外部の委託会社に協力を仰ぐのか、プロジェクト自体の全体的な方向性も決めておきます。
後者の「外部の委託会社に協力を仰ぐ」ことも視野に入れて進めていく場合は、この後の手順で、協力会社(カート会社、決済代行会社、制作会社など)の選定を行う必要があります。
実際のスケジュールについては、カート会社でのアカウント発行や、決済代行会社の審査などの諸準備にかかる期間だったり、制作会社に提示される納期によって前後する可能性があります。
そのため、「この時期までにリニューアル完了、運用開始したい」という希望や事情に対応できることを前提としつつ、情報収集や各社への相談を進めていくことが重要です。
Step 3. カートシステムや制作の委託先を選定する
「Step 1」や「Step 2」の手順で整理した課題感、予算感、スケジュール感をもとに、各社への問い合わせや具体的な相談を行い、導入するサービスや協力会社を選定します。
なお、各社の体制や対応範囲はさまざまですが、基本的な連携構造として、下記のような分類や担当領域があります。
カート会社
カートシステム(ECプラットフォーム)を提供、運用する会社です。カートシステムにはASPカートと呼ばれるものや、オープンソース型のものがあります。
カートシステムの例:ecforce、Shopify、makeshop、futureshop、カラーミーショップ、EC-CUBEなど
決済代行会社
ECサイトに組み込む決済サービスを提供する会社です。決済手段としてはクレジットカード決済、コンビニ決済、バーコード決済、キャリア決済、後払い決済などがあります。
例:GMOイプシロン、GMOペイメントゲートウェイ、ソニーペイメント、ZEUS、SBペイメントサービスなど
制作会社
ECサイト構築や運用支援を担当する会社です。システム開発、データ移行、デザイン・コーディング、コンサルティング、マーケティングなど、依頼したい分野や具体的な内容に応じて委託先を検討する必要があります。
基幹システムやその他関連サービスを提供する会社
商品の在庫管理やPOS連携、WMS(倉庫管理・出荷手配)、CRM(顧客管理)、OMS(受発注管理)、MAツールなど、さまざまな関連サービスを提供する会社です。前提として、使用するカートシステムや決済サービスによって対応可否が異なるサービスもあり、関係各社への確認や連携が必要となります。
サービスの例:ネクストエンジン、Salesforce、CROSS MALL、オープンロジなど
なお、リニューアルの目的にもよりますが、まずは「リニューアルの目的や要望を叶えられる機能性をもつカートシステムの選定」を優先して進めていくのが一般的です。 あらかじめ、導入したい決済サービスや関連サービスが決まっているのであれば、それらとの相性や導入可否も踏まえてカートシステムを選定する必要があるためです。
また、カートシステムの選定にあたっては、データ移行を実施するかを踏まえて検討する必要があります。
データ移行とは、リニューアル前のECサイトにあった各種データ(商品、顧客、注文履歴、定期台帳など)を、リニューアル後の新しい環境に移す作業です。
顧客や注文関連のデータ移行を行わないリニューアルでは、既存顧客に再度会員登録をしてもらう必要があったり、定期購入が一旦解約になって再注文してもらう必要があったりと、顧客に大きな手間や混乱をもたらすほか、重大な機会損失になり得ます。
カートシステム側の仕様によっては、そもそもデータ移行が実現できない場合があるため、大切な顧客や過去の重要データを失わないために、事前に確認しておくのが重要です。
もしも、カートシステム自体を決めかねていたり、「第三者の専門家の視点で意見をもらった上で決めたい」といった思いがあれば、まずは制作会社に相談してみるのも一つの方法です。 制作会社によっては、取り扱いのあるカートシステムの種類が多いことを強みにしていて、カートシステムの選定段階のコンサルティングから相談できる場合があります。 カート会社に直接相談した際、自社システムの強みなどを中心に説明を受けることが多いものの、他社システムとの機能性の違いや、実際に使い始めるまでは見えにくい仕様について、詳しく知ることがないまま話が進んでしまうことも多いです。 さまざまなカートシステムでの構築・支援経験がある制作会社であれば、各カートの仕様差や機能性の違いについてなど、豊富な知見があります。 本当に要件を満たすカートシステムがあるのかどうか、協力各社の意見も取り入れながら慎重に検討していくと、リニューアルの成功につながります。
Step 4. ECサイトの要求定義、要件定義を行う
ECサイトの「要求定義」とは、制作を依頼する側が、実現したいことや機能要望などをまとめる段階です。
リニューアル自体の目的や解決したい課題については事前に整理しておきましたが、選定したカートシステムの機能性や決済サービスの仕様も踏まえて、現実的に実現できる範囲で、より具体的な要望を整理しておきます。
これは、制作会社に委託する作業内容や、最終的な完成イメージをすり合わせるために必要なプロセスとなります。
さらには、要求定義をもとに「RFP(提案依頼書)」と呼ばれる文書の形式にまとめることができると、制作会社に齟齬なく要望を伝えることができます。
また、「要件定義」とは、事前に提示された要求を基に作成する、より技術的な内容にフォーカスした計画のことです。システム上の基本機能や、仕様の詳細などを定めておく必要があるので、社内に技術者や専門家がいない場合は、制作会社に委託することも多いです。
要するに、要求定義やRFPは「何を求めるか」、要件定義は「それをどのように実装するか」を明確にする工程です。
プロジェクトの規模によっては、要件定義をドキュメントに起こす工程は省略することがありますが、このような内容を、依頼側と委託先とであらかじめコンセンサスを取っておくことが重要となります。
Step 5. サービスの本契約や、ECサイト構築の実作業を進める
利用するカートシステムや決済サービスの本契約や、ECサイトの制作(基本設定、デザイン、コーディング等)を実際に進めます。
本契約後、カートシステムのアカウント開設には数日〜数週間、長くて1ヶ月程度の時間を要したり、決済サービスの利用までに数週〜数ヶ月間の審査期間が必要となることがあります。
場合によっては、法人契約を進めるための各書類(登記簿謄本や印鑑証明書など)が必要になることもありますので、早めに各社に確認しておくことをおすすめします。
制作会社に作業を委託する場合は、制作会社の主導のもと、定期的な進捗報告や状況確認の機会を持ちながら、制作内容に齟齬がないように進めていきます。
Step 6. テスト運用
ECサイトが大方仕上がったら、本番公開と本運用開始を前に、全体的な表示確認や動作テストを行います。会員登録、注文、マイページ機能の利用など、実際のユーザー操作を想定した動作テストのほか、商品登録、受注処理、顧客対応など、運用側のルーティン作業を一通りシミュレーションしておき、不具合や想定漏れがないかを入念に確認しておくことが重要です。
関係各社と連携の上、公開作業の前後のフローもあらかじめ整理しておき、十分なすり合わせをした上で本番公開に備えます。
Step 7. 本番公開作業
いよいよ準備が整ったら、本番公開作業を実施します。
公開作業にあたっては、一般向けのECサイト利用を制限するメンテナンス期間(数日〜1週間程度)を設けておくことが一般的です。
この間に行う作業としては、ドメインの切り替え(DNS設定)やサーバー移行、各種データ移行などが含まれます。
公開直後にも、改めてテスト注文や表示確認を行い、正常運用が可能かどうかを入念に確認します。
Step 8. 本運用開始
リニューアル作業を終えて通常運用を開始したら、日々の受注処理や在庫管理、顧客対応などを行いながら、必要に応じてさらなる改善やマーケティング施策を検討していきましょう。 アクセス解析や売上データも確認し、関係各社とも連携しながら、リニューアル前後を振り返って効果を検証することが大切です。その上で、課題や改善点を次の施策につなげていくことで、ECサイトを継続的に成長させることができます。
ECサイトリニューアル時の注意点
ベンダー選定時の注意点
- 安さだけで判断しない
コストを優先して業者を選んだ結果、納期遅延や機能不足が起きれば機会損失につながります。 - カートシステムの実績を確認
移行先のカートを扱った経験があるか、同様のリニューアル実績があるかを必ず確認しましょう。 - リニューアル経験の豊富さ
新規構築とリニューアルではノウハウが異なるため、過去にリニューアル案件を多く手掛けている業者がおすすめです。
カート選定時の注意点
- 必要機能の洗い出し
現行カートで利用している機能の中で「必須機能」が新カートでも利用可能か確認することが重要です。 - データ移行の可否
顧客データ・受注履歴が引き継げるかをチェック。CRM連携の有無によっても要件が変わります。 - 決済とセキュリティ
移行後に利用できる決済方法や、PCI DSS/3Dセキュア対応などのセキュリティ要件を事前に確認しましょう。
URL構造変更の注意点
- リダイレクト設定を必ず実施
URLが変わる場合は、SEO順位やアクセスを守るために301リダイレクトを適切に設定する必要があります。
リリース時の注意点
- DNS切り替えの影響を考慮
切り替え直後は浸透に時間がかかるため、新旧サイトを並行して運用する準備が必要です。 - 顧客への周知徹底
パスワード再設定が必要な場合は、1ヶ月以上前からメール等で複数回告知を行いましょう。 - 顧客離脱を防ぐ工夫
UIの変更で常連客に負担がかかる可能性があります。リニューアル記念セールやポイント付与を活用してスムーズな移行を促しましょう。
リリース後の注意点
- 旧サイト契約を一定期間残す
クリティカルな不具合が発生した際に切り戻せるよう、旧カートはしばらく契約を残しておくと安心です。
ECサイトリニューアルの費用の相場
ECサイトのリニューアルにかかる費用は、制作するECサイトの規模感や、求める機能や要件、導入する各種サービスによっても大きく変動します。
デザイン中心のリニューアルなど、機能改修やシステム移行を含まない小規模なリニューアルであれば数十万円程度から、カートシステムの乗り換えや大規模な機能改修、新たなサービスの導入などを含むフルリニューアルでは100万円〜数百万円、場合によっては1,000万円以上に及ぶこともあります。
そもそも、リニューアルに伴ってかかる費用の種類としては、大まかに下記のように分類できます。
初期費用
- 初回の構築時にかかる開発・制作費用
- リニューアルに伴うデータ移行などの支援費用
- 機能追加に伴う買い切り型の追加費用
- 各種サービスの利用にかかる初期費用
維持費用(月額・年額)
- サーバー・ドメイン費用
- カートシステムの月額利用料
- その他導入サービスの継続利用にかかる基本費用
- ECサイトの運用保守やコンサルティング委託費用
決済手数料
- 注文の回数や利用金額に応じて支払う決済代行会社・カート会社への手数料
- 例:注文金額の3.6%が手数料としてかかるケースなど
費用検討のポイント
リニューアルを検討する背景や課題感によって、初期費用を抑えたい、ランニングコストを下げたい、取引量増加に伴って決済手数料を下げたいなど事情はさまざまです。
特に初期費用は導入システムやサービスによって大きく変動し、ランニングコストとのバランスも含めて検討が必要です。
一般的にオーダーメイドに近づくほど費用は高額になりますが、標準仕様や既存サービスを活用すれば費用を抑えることができます。
段階的リニューアルのすすめ
初期要件を必要最低限に絞り込み、段階的に改修を加えていく計画が有効です。
初期費用を抑えつつ、後から不要な実装でコストを浪費するリスクも避けられます。
スケールアップを見据えた環境選び
後から機能拡張がしやすい環境を選ぶことが重要です。
汎用性・拡張性の高いカートシステムを選定するほか、制作会社に運用保守を委託し、月額制で柔軟に機能改修を依頼できる体制を整えることも有効です。
運用後に見えてきた課題を改善し続けることで、ECサイトの成長につなげられます。
まとめ:事前準備と顧客目線がリニューアル成功の鍵
ECサイトリニューアルは、デザイン刷新だけでなく、SEO、システム、業務フロー、セキュリティなど多方面に影響するプロジェクトです。成功させるためには以下のポイントが欠かせません。
- 事前準備:「なぜリニューアルするのか」という目的を明確にし、予算やスケジュール、要件定義を綿密に行う。
- パートナー選び:ベンダーやカートシステムは、価格だけでなく実績や専門性を重視して慎重に選ぶ。
- 顧客目線:データ移行やSEO対策を徹底し、顧客が迷わず快適に買い物できるサイト設計を心がける。
これらを押さえることで、ECサイトリニューアルは事業成長につながる大きなチャンスとなります。
株式会社カラフルクローバーは、様々なカートシステムでのリニューアル・乗り換えをサポートしてきた実績を持ち、ECサイト運営者様にとって大切な資産である顧客データや購買データなど、あらゆるデータの移行にも強みがあります。「安心してリニューアルに取り組みたい」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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